「三日間の幸福」・「寿命を買い取ってもらった。一年につき、一万円で。」感想

■概要・感想(ネタバレなし)

三秋縋著の小説「三日間の幸福」と,そのコミカライズ版である「寿命を買い取ってもらった。一年につき、一万円で。」の感想です。

三日間の幸福 (メディアワークス文庫)
三秋縋
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 読書メーター の感想 : 三日間の幸福 (メディアワークス文庫)

寿命を買い取ってもらった。一年につき、一万円で。 1 (ジャンプコミックス)
田口 囁一
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寿命を買い取ってもらった。一年につき、一万円で。 2 (ジャンプコミックス)
寿命を買い取ってもらった。一年につき、一万円で。 3 (ジャンプコミックス)

私は先にジャンプ+で漫画版を最後まで拝見しまして,その後に原作小説を購入,拝見しました。

内容は,未来を悲観して寿命の大半を売り払った男性と,その男が寿命が少なくなったことにより暴挙に出ないよう監視するために派遣された女性を描いたSF作品です。
前半はなかなかじれったい感じですが,話が進むにつれて引き込まれていきました。
後半の爽快感,スピード感はなかなか秀逸です。
また,含みを持たせて終わるラストシーンもすっきりしていてとても良いと思います。

未読の方は1度,手にとってご覧いただければと思います。
漫画,原作小説ともに大筋は一緒で,どちらも読みやすい絵柄,文体ですので,お好きな方をどうぞ。

以下,ネタバレありで感想を記載します。
内容を把握している方向けの記載となりますのでご注意を。

■感想(ネタバレあり)

(以下,ネタバレありのため少し空行を入れておきます)

本作では,自分の寿命・時間・健康を売ってお金に変えることができるわけですが,寿命の場合は人生の後ろから,時間の場合は人生の前から売って行くことになるので,若い時間が相対的に長くなる寿命を売る方がダメージは少ないように思います。
まぁ寿命1年と時間1年が同価格かはわかりませんが…。
監視員の給料(?)もありそうですので,ミヤギさんのように借金を返さなければならない環境では時間を売った方が数値的なメリットがあるのかな…。
健康は売る単位が気になるところですが,これだけ他の2つとはちょっと毛色が違いますね。

そんな世界で,本作の主人公のクスノキさんは30年ほどの余命を売って寿命を残り3ヶ月まで減らしてしまうわけですが,能動的にやっていることもありこれはもう自殺または自傷行為に近いですね。
売った後に暴挙に出る人が多いから監視員をつけるという設定も納得のいくものだと思います。
暴挙に出ない人はそのまま余生をただひっそり過ごしていきそうだと私は思います。

ただ,クスノキさんはひねくれているのが幸いしてか,同じくいくらかひねくれていると予想される監視員のミヤギさんと波長が合い,素晴らしい余生を過ごせたと思います。
査定金額の面でも高額になっていることから,何らかの尺度でですが彼の人生の価値が上がっていることが証明されています。

最終的には2人ともがお互いのために寿命を3日だけ残した状態となり,寿命を売る前の人生と比べて短くとも価値のある人生となります。
この後,作中で最後の3日間についての記載がなくそのまま終わっているのがこの作品のきれいで良いところだと思います。
逆にこれ以上何か書くと無粋なようにも思えます。
合わせて,小説の15章の「賢者の贈り物」というタイトルもぴったりで実に良いと思います。

寿命が短くなっているので完全なハッピーエンドではないのでしょうけども,本作は2人および最後まで読み進めた読者にとっては爽快感のあるハッピーエンドになっていると思います。
なかなか読後感も良いので積極的におすすめできる作品でした。

あとは余談ですが…。
本作はSF作品ではありますが,買取システムの査定方法や監視員の仕組みなどの細かい設定について考察するのは無粋だし,あまり意味がないと思うのですが,1点どうしても気になってしまう点があります

というのは,小説の原題および漫画のタイトルが「寿命を買い取ってもらった。一年につき、一万円で。」であるのに,実際は買取価格が30円だったという点で,あまりこの差異が内容に響いてこないのに真実でないのがどうかと思っています。
漫画のタイトルの方がキャッチーではありますが,私は本作のタイトルは小説のタイトルである「三日間の幸福」である方が,ラストでネタがわかったときにすっきりすることも踏まえて良いと思います。

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