発売されてからしばらく経ってしまいましたが,混物語を一通り読んだので感想を書きたいと思います。
■混物語とは
元々は劇場アニメ「傷物語」の特典として配布された小説で,その後に書下ろしを追加して単行本化されたものです。
劇場版傷物語(I~III)の特典としてそれぞれ4話ずつ計12話,書き下ろしが3話の全15話構成です。
内容としては,物語シリーズの主人公である阿良々木暦が著者・西尾維新の他シリーズの登場人物と出会った体での話のコラボ小説で,映画を見に来た方への特典としてはとてもいいものだと思いつつ,好きな人は何度も映画館に行くか別途ネットオークションなどを駆使しないと全編を読むことができなず,なかなかひどい仕様だと思いました。
私はそのうち書籍化することを期待しつつ静観していたので,目論見が当たってよかったと思っています。
以下,ネタバレありで感想を記載します。
内容を把握している方向けの記載もございますのでご注意を。
■感想(ネタバレあり)
(以下,ネタバレありのため少し空行を入れておきます)
①第忘話 きょうこバランス
忘却探偵シリーズの掟上今日子さんをフィーチャーした話。
私は忘却探偵シリーズは何かの特典でついてきた1話を読んだのと,数年前にやってたドラマを見た程度であまり詳しくはないのですが,この話を理解するのにはこれくらいで十分と思いました。
忘却探偵シリーズ,物語シリーズともに現行で新作が出ているシリーズということもあり,雰囲気としては両シリーズのどちらのテイストもあって1話目としてとっかかりやすかったものと思います。
終わり方もとてもきれいでした。
②第強話 じゅんビルド
哀川潤さんをフィーチャーした話。
雰囲気から想像するに,時期的には戯言シリーズの辺りでしょうか。
私は戯言シリーズ~最強シリーズ既刊は既読なのでそれなりに知識ありです。
この頃の潤さんは破天荒すぎて小説が大味になる印象があったり,コラボ作品として作品中最強vs作品中最強をやるのかと思わせておいてやらなかったりで,ちょっと不完全燃焼感があります。
影縫さんの予想と違いますが,吸血鬼と請負人が戦ったら請負人の勝ちと予想します。
最強シリーズの潤さんはかなり人間離れしていますし,メンタルが強すぎる。
③第法話 のみルール
伝説シリーズの地濃鑿さんをフィーチャーした話。
私は伝説シリーズ未読でほぼ予備知識なしで読みましたが,いまいち世界観がわからなかったですね。
コラボもやや強引な気がしました。
オチもちょっと納得がいかない!w
小数点にこだわるならそもそも円周率を暗証番号すること自体がよくない。
④第眼話 まゆみレッドアイ
美少年シリーズの瞳島眉美さんをフィーチャーした話。
私は美少年シリーズも未読です。
未読ですが,この話はあまりバックグラウンドを把握していなくてもわかる話だったように思います。
内容は腑に落ちないところもありますが,まぁでも感覚は人それぞれだからこういうことも多かれ少なかれあるのかなと思います。
目がよすぎるというのも考えものですね。
これは目だけじゃないんでしょうけど。
⑤第眼話 くろねこベッド
世界シリーズの病院坂黒猫さんをフィーチャーした話。
私は世界シリーズは既読です。
というかちゃんと終わらせるのを待っている状態です。
くろね子さんの雰囲気や長いセリフがなつかしいですが,これもやっぱりコラボが強引な気がしました。
オチはすごくしっくり来たのでよかったです。
⑥第血話 りすかブラッド
りすかシリーズの水倉りすかさんをフィーチャーした話。
私はりすかシリーズ未読であることもあり,りすかさんのセリフの意味が最初はよくわかりませんでした。
仕組みに気づくとわりと読めますが,とても読みにくいです。
あとこのシリーズって未完で放置が長くないですかね。
コラボじゃなくて本編を待っている人が多いのではないでしょうか。
この話の中でも「な つ か し や!」とか「懐かし過ぎてキャラ忘れたぜえ」とか言ってるし,そういう自虐ネタ?
⑦第刀話 ひていクリア
刀語シリーズの否定姫をフィーチャーした話。
私は刀語シリーズは既読です(シリーズと言っていいのかよくわかりませんが)。
アニメも含めて西尾維新作品で1番おもしろいと思っているのですが,続きは出そうにないですね。
時代を飛び越えたコラボでしたが,理由付けもかなりしっくり来たように思います。
否定姫をチョイスしたのがよかったですかね。
オチはちょっとずるい気がしないでもないですが。
⑧第殺話 いおりフーガ
人間シリーズの無桐伊織さんをフィーチャーした話。
私は人間シリーズは既読ですが昔過ぎて記憶がちょっと曖昧でした。
コラボはちょっと強引だった気がしますが,なかなか懐かしい気持ちにはなれました。
人識君じゃなくて伊織さんをチョイスしたのもよい感じ。
⑨第軍話 しおぎレンジャー
戯言シリーズの西条玉藻さん,紫木一姫さん,萩原子荻さんをフィーチャーした話。
戯言シリーズはデビュー作かつ長編だったこともあり出番が多いですね。
3人ともキャラが立っていますし,特に萩原子荻さんは作者のお気に入り感を以前から感じておりまして,今回の登場は妥当かと思います。
内容としては,ネタとしてはおもしろかったのですが,オチはなんか不完全燃焼でした。
そんな単純なもんじゃねーだろ!w …っていう。
⑩第招話 あかりトリプル
戯言シリーズの三つ子メイドをフィーチャーした話。
戯言シリーズは手厚いですね。
このお三方は前にOVA化されたクビキリサイクルに登場するのでやや目新しいという点もあるのかな。
これまでのコラボ話はコラボした方を見送って終わっていましたが,この話は投げっぱなし(鴉の濡れ羽島まで連れていかれたところ)で終わっていて驚きました。
他の何かに繋がっているんですかね?
⑪第喰話 りずむロックン
戯言シリーズの匂宮兄弟をフィーチャーした話。
戯言シリーズは手厚いというかここまで来るとネタ切れ感がありました。
その分,「異世界交流ももう十一回目だ」とか言ってて,変に手慣れてきている感じがちょっとおもしろかったです。
コラボの理由も地理的な意味で強引さを感じました。
オチもちょっと納得がいかない…。
時宮の能力が中途半端に万能すぎないか?
殺し名や呪い名の辺りの話が好きだった方にはなかなかうれしいコラボだったのではないかと思いますが,自分は戯言シリーズは前半の方が好きだなぁ…。
⑫第大話 みここコミュニティ
戯言シリーズの葵井巫女子さん,江本智絵さん,貴宮むいみさんをフィーチャーした話。
と思わせておいてこの話は実質は戯言遣いこといーちゃんの話かと思います。
ここに来て主人公が絡んでくるとは。
あとは,この話は物語シリーズ側も結構な人数で出てくるのもポイント。
この話はコラボしている感じが他の話より強かったように思います。
合コン(の二次会メイン)の話でしたが,両方とも知っているとなんだか変な感じがしました。
ていうか恋人と一緒に合コン行ってるのか…。
オチはともかく,「連絡が取れなくなった」とさらっと書いてあってちょっとびっくりしました。
元々戯言シリーズは登場人物が死にまくっていますが,コラボの話でそれを思い出させるとは…!
最近はわりとマイルドになりましたね。
⑬第英話 くうインビジブル
伝説シリーズの空々空さんをフィーチャーした話。
伝説シリーズ未読でほぼ予備知識がないせいか状況はよくわかりませんでしたが,バトル展開だったのであまりバックグラウンドを把握していなくても大筋は追えたように思います。
その分,あまりこれといった感想も残らなかったというか…。
⑭第騙話 らいルーレット
美少年シリーズの札槻嘘さんをフィーチャーした話。
バックグラウンドはイマイチわかりませんでしたが,必要なところは説明されていたようであまり困りませんでした。
また,わりと物語シリーズ風の終わり方で違和感もありませんでした。
美少年シリーズも現行シリーズなので,似たような感じなのかな。
⑮第終話 まごころフィニッシャー
戯言シリーズの想影真心さんをフィーチャーした話。
人類最終とのことで,最終話にふさわしい人選かと思いますが,戯言シリーズ本編で登場する真心さんはかなりぶっ飛んでいる状態なのに対し,この話ではそこまでのぶっ飛び感はありませんでした。
何かと戦ったりしていないしね。
真心さんは性別不明だと思っていたのですが,阿良々木君が地の文で「彼女」って言っているので女性なんですかね。
(阿良々木君から見て)そう見えるだけかな。
オチはまさかの宇宙でしたが,言われてみると状況としては納得。
手段は考えないことにしているので,それも納得。
最後の方はこのコラボ全体の締めもあって最終話としての役目を果たせたように思います。
■全体の感想とまとめ
混物語は,西尾維新のファン向けかつ上級者向けの内容だったと思います。
当たり前かもしれませんが,知っているシリーズの話の方がよくわかったし,おもしろく感じたように思います。
コラボの配分で戯言シリーズが多かったのが目立ちましたが,デビュー作で派生作品も多いので納得かな。
他の面子としては十二大戦,めだかボックスとのコラボがあった方がよかったかと思います。
個人的には症年症女や大斬辺りもあるとうれしかったですね。
本としてはとても厚くそれなりに高価(税別1,850円)でしたが,渡辺明夫さんのイラストもあり,ファン向けの作品として十分買いだと思います。
ただ,物語シリーズは既刊全て既読状態で,かつ他のシリーズも概要くらいは把握しているくらいじゃないとおもしろさは減っていくと思います。
(私自身未読作品が多く,本当はもっと楽しく読めた可能性が高いと思うとちょっと残念です)
おまけを楽しむために他作品を読むのはなんか違う気もしますが,小説に限らず好きな作家さんの作品は広く抑えていた方が思わぬところで小ネタに当たったりして,いろいろとよいのかもしれませんね。
また,これらの大部分は映画の特典だったという点がポイントかと思います。
劇場版傷物語は1時間ちょい×3作構成でしたが,原作はそれほど長くありません(むしろこのおまけの本の方が長いくらい)。
全体的にゆったりした進行だったように思いまして,普通の構成なら全部で2時間に収まり,わざわざ3部構成にしない方がよかったのではないかと思っています。
ましてや,小説の発売順とアニメの公開順が変わっていて後で(具体的には猫物語でエピソードが再登場したとき)原作と毛色が変わってしまったこともあり,映画向けじゃなく普通に偽物語の前にやっていればよかったと度々思います。
# 偽物語もゆっくり進行で11話構成だったので,傷物語+偽物語で1クールがよかったのではないかと勝手に思っています。
ちょっと脱線しましたが,この辺も踏まえて,劇場版傷物語もなかなか上級者向けだったように思います。
# それを踏まえてか,劇場版の続・終物語は1回で3時間弱くらい?になっていました。
集中力が切れかけましたが,個人的にはこっちの構成の方が好きです。
物語シリーズは大分息の長いシリーズになりました。
終物語で終わりかと思いきや,その後も続々と新刊が出ていて今後がどうなるかあまり予想できません。
個人的には,頑張って延命するくらいならどこかでしっかり区切りをつけて,後腐れなく終わってほしいと思います。
●おまけ